
トップの想いを3万人の社員に届ける方法 ── 三井住友FGが取り組む「AIーCEO」
働き方が変わり労働移動も活発になり、前提には人手不足がある。企業は従業員とのエンゲージメントをより高く維持し続ける必要に駆られています。従業員エンゲージメントの向上・維持も人事の大切なKPIとなりそうです。エンゲージメントを高めるためには、魅力的な待遇を用意することに加えて、企業文化に共感し続けてもらうための「カルチャーマネジメント」が重要です。
先日の日経新聞では、3万人の行員を要する三井住友フィナンシャルグループがAIを活用して取り組むカルチャーマネジメントの例が取り上げられていました。(参考:三井住友FG、壁打ち相手は「AI社長」 企画・提案に中島氏の視点回答)
社長の発言・判断基準・性格までを学習した生成AIに、現場行員がチャット上で壁打ちできる ―― AIを活用することで、社長の想いを3万人もの従業員にダイレクトに届けるカルチャーマネジメントが実現できるとともに、従業員のスキルアップや生産性の向上にも貢献できる取り組みになると感じました。
「社長はこんなとき、どんな視点で考える?」
「この企画書、グループ視点だと何を足すといい?」
トップの頭の中が“24時間・全支店に常設”される。組織文化をAIで拡張する試みです。経営メッセージやバリューを浸透させたいのに、朝礼た社内報といった限られた場面だけで伝えて終わってしまう。そんなカルチャーマネジメントを日常業務・行動に落とし込むことができそうです。これらの課題と発見を背景にして、今回の #AI活用人事ブログ では、「組織文化を日常行動に落とし込む」 ことに特化した海外のAIサービスを4つ選び、現場視点で解説します。
企業文化の浸透を支援するAIサービス4選
Moveworks【米国】

できること
社内ポータル・FAQ・ヘルプデスクを大規模言語モデルに学習させ、SlackやTeams上で「自社トンマナ」に合わせたAI ボットとして利用できる。申請ワークフローも対話形式で申し込みが可能。
活用イメージ
福利厚生など社内のルールに関する質問に「自社らしい言葉」で答えながら、カルチャーを刷り込む。FAQ を小まめにタグ付けして「回答文テンプレ」に経営メッセージを埋め込むなどして浸透効果を高める。
参照元:オフィシャルサイト
Microsoft Viva + Copilot【米国】

できること
Teams内でエンゲージメント、ナレッジ共有を促すMicrosoft 365連携アプリ。Copilotを組み合わせると会議メモ自動要約 → ナラティブの共有まで自動で展開できる。
活用イメージ
社内のチャットツールに成功事例のチャンネルを加えて、チャンネルへの共有を自動化させる。成功事例のフィードバックを常時循環させることで、ホメる文化を醸成する。
参照元:オフィシャルサイト
Culture Amp【オーストラリア】

できること
エンゲージメント調査結果をAIが解析し、マネジャー向けに「次の1on1で話すネタ」や施策案を提案できる。調査結果の数字をアクションに変換する支援をAIが行う。
活用イメージ
定量→定性の橋渡しを自動化。「“数字”で見えた課題を“行動”に落とし込む」プロセスを支援し、カルチャーギャップを埋める。エンゲージメント調査のスコアはわかったけど、何をはじめればいいのかを解決する。
参照元:オフィシャルサイト
Leena AI【米国/インド】

できること
就業規則、オンボーディング資料、バリューブックなどを読み込み、Q&A形式で案内+ワークフロー実行する。新入社員に企業文化を早期に浸透することができる。
活用イメージ
バリューブックを読み込ませ、質問に合わせて「Why:なぜそうするのか」をストーリー仕立てで回答させると、新入社員でも企業文化の早期理解が進む。
参照元:オフィシャルサイト
カルチャーマネジメントへのAI導入を成功に導くための4つのポイント
1. 既存チャネルとの親和性を確かめる
Slackなどのビジネスチャットツール、あるいは社内メールといった既存の社内コミュニケーション基盤の中に、導入する AI サービスが違和感なく溶け込めるかを確認しましょう。社員が日常的に使うツールに無理なく組み込むことで、利用定着率が高まり「新しい仕組みが増えて負担が増えた」と感じさせないことが大切です。
2. 経営メッセージをどこまで学習させられるかを吟味する
サービスに学習させるべきキーワードやフレーズ、企業のミッション・ビジョンといった「経営メッセージ」をどの程度まで反映できるかを確認します。トップの言葉遣いや組織固有の文化やトンマナをAIに十分インプットできれば、チャットボットやレコメンド機能の回答が「自社らしいトンマナ」で語ることができ、文化浸透の効果が高まります。
3. AI が提示する行動が具体的かどうかを検証する
AIが社員に推奨するアクションが、概念やスローガンにとどまらず、具体的な行動レベルまで落ちているかをチェックしてください。たとえば「今週の1on1でこの質問を投げかけてみる」など、すぐに実践できる指示になっていれば、行動変容を促す力が高まります。
4. 説明責任を果たせるログが取得できるかを確認する
AI がどのような根拠で回答や推奨を行ったのかを、後から人事部門が説明できる形でログを取得できるかを確かめましょう。ブラックボックス化を防ぎ、社員からの疑問や経営陣への報告に対応できる透明性を担保することが、長期的な信頼と安心を支える重要な要件となります。
企業文化は日常のインタラクティブなコミュニケーションに宿る
三井住友FGのAI-CEOから学ぶことができたのは「トップの頭の中」を日常チャットに埋め込む発想でした。今回紹介したようなAIサービスを組み合わせることで、AI-CEOのように日常のインタラクティブなコミュニケーションでカルチャーマネジメントの実践が可能になります。
トップダウンのスローガンや、人事からのテンプレート的なメッセージでは文化の浸透は不十分です。AIを「文化の翻訳レイヤー」として挟むことで、「日常的に企業文化について会話がされている」環境を作ることができそうです。これからのエンゲージメント向上のために、トップや人事が声を張り上げる形でのカルチャーマネジメントから、AI活用人事への変革を検討してみる必要がありそうです。
この記事を書いた人

#AI活用人事 舟久保(ふなくぼ)
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。ID統合とCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDeconomics」の実現を目指す。加えて、人事・採用のリスキリングにも挑戦中。

