
世界トップの求人サイト「Indeed」と、AIを活用したスキル向上プラットフォームである「Udemy」が2025年6月3日に提携を発表したという記事が目に留まりました。(※参考「(英文記事)Indeed Partners with Udemy to Empower Job Seekers with In-Demand Skills」)
提携の内容を要約すると以下になります。
IndeedとUdemyは提携し、求職者が必要なスキルを学び、それを活かして理想の仕事に就くまでを一気通貫で支援する取り組みを始めた。
この提携により、求職者はデータサイエンスやAIなど即戦力となるスキルをUdemyで学び、そのスキルに合った求人にIndeed上で応募できるようになる。
履歴書の添削や面接準備などのキャリア支援サービスも活用でき、学びから就職、キャリアアップまでの流れを加速させる仕組みが整えられている。
AIを活用したスキルアップ支援と、スキルベースでの求人マッチングの統合は求職者と採用企業によい影響を与えるエコシステムになると思います。また、人事として人材スカウトを行う際のアクションも変わってくるのではないかと感じました。
この記事では、この提携が示唆する「採用前教育」という新しい前提と、「スキルベース採用」への移行が企業と求職者の双方に与える影響を考えてみたいと思います。
履歴書・職務経歴書からスキルベースへと、採用の出発点が変わりはじめる

従来の採用は、履歴書や職務経歴書といった静的な情報がはじまりでした。企業の人事は「どこで働いてきたか」「どんな肩書きを持っているか」を基に候補者を評価し、「入社後に育てる」という考え方が主流です。しかし、スキルのライフサイクルは短くなり、職務の枠組みも変化し続けています。企業は「新しいスキル」や「学び続ける力」をより重視するようになりました。これが「スキルベース採用」への移行の背景にあります。
IndeedとUdemyの提携は、この流れを象徴する動きです。
提携の概要 ── 学びの成果がそのまま求人マッチングにつながる構造が生まれる
両社の提携によって、Udemyでスキルを習得したユーザーが、Indeedを通じてそのスキルを活かせる求人へのアクセスや、求める企業とのマッチングが容易になります。たとえば、データ分析やAIに関するコースを受講・修了した求職者は、それに紐づいた求人情報を優先的に提示されるようになります。
Udemyを利用して、12,000以上の講座の中から選択したプロンプトエンジニアリングなど、今まさに需要が高まっている技術へのリスキリングを行い。さらに、Indeedの履歴書添削や面接対策といったキャリア支援を活用して、学んだスキルが実際に就職へとつながる確度を高めることができます。
「採用前教育」という発想の転換 ── 採用される前に学びがはじまっているという新しい前提が生まれる
これまでの人材育成は、入社後を起点として設計されてきました。企業が教育費用を負担し、OJTや社内研修を通じて徐々に戦力化していくというモデルです。ところが今後は、「採用前教育」が前提になる可能性があります。採用される前から、企業が求めるスキルを自ら学び、自らのキャリアを設計するという動きが、転職市場で主流になっていく予感がします。
こうした流れは、以下のような変化をもたらします。
採用とは「誰を育てるか」ではなく「誰がすでに学んでいるか」を見る行為になる
求職者は、企業の提示するスキル要件を「逆算して学ぶ」ようになる
教育機会と求人情報の間に「相互参照・マッチング」の関係が生まれる
これらの変化は、企業と求職者の関係をより平等で相互選択的なものに変える可能性があります。
履歴書よりもスキル証明が価値を持つようになってくる
このような構造の変化によって、職務経歴や所属した企業よりも「スキルの証明」が重視されるようになります。たとえば、Udemyで修了した講座や、AIツールの操作能力といった定量的なスキルデータが、求人とのマッチング材料として使われます。
プロジェクトマネジメントの基礎がある
Pythonを使ったデータ加工ができる
営業に必要なコミュニケーションスキルを学んだ
このような明文化されたスキルセットが、職務経歴書に勝る説得力を持ちはじめます。企業側もまた、「このスキルを学んだ方・学んでいる方・学んでくれる方」を探す、という過去・現在・未来のスキル証明をオファーすることが可能になってきます。
教育・評価・採用の新しいエコシステムが創られる
IndeedとUdemyがサービスを統合することによって、「教育」「評価」「採用」という3つの接点を1つのエコシステム内で完結させることができるようになります。これまでは、
教育:学校や職業訓練機関
評価:資格試験や企業の採用試験
採用:企業の選考フロー
というように、それぞれが分断されていました。これからは、
教育:Udemyでスキルを習得
評価:学習履歴や修了証をポートフォリオとして活用
採用:Indeedでそのスキルに合った求人へ応募
というエコシステムが生まれていきそうです。これは、企業にとっては「採用前の育成コストを外部化できる」利点となり、求職者にとっては「就職に直結する学習経路」を選べる安心感につながります。
学びと採用の融合が進むことで、リスキリングの意義と価値が高くなる
少子高齢化の先進国であり、かつ主要先進国の中で労働生産性が低位にある日本は、リスキリングとリスキリングによる生産性向上が必須であることは長く言われ続けている課題です。それでも、なかなか力強く進んでいかないリスキリングについて、「教育・評価・採用の新しいエコシステム」が推進力になる可能性があります。身につけた新しいスキルがすぐに次の仕事の機会につながる環境が、リスキリングの意義と価値を高めます。
加えて、スキルベース採用の時代には、求職者側だけでなく企業側にも変化が求められます。人事部門や現場マネージャーは、スキル要件を言語化し、社内外に共有する力が必要になります。求職者側も「肩書きではなくスキルで語る」習慣が重要になります。キャリアの途中で学び直し、方向転換する柔軟性を持つことが必要になってきます。教育は学校で終わるものではなく、キャリアと並走するものになる。採用企業・求職者の双方にこのような圧力が強くなっていきます。
採用における選考の重心が「過去の実績」から「現在のスキル」へ、そして「未来への学習意欲」へと移り変わっていくのではないでしょうか。
この記事を書いた人

#AI活用人事 舟久保(ふなくぼ)
総合マーケティング会社で23年間、NBメーカーの商品開発・販促企画のアイディア創出のための調査から、クチコミマーケティングの企画・施策実行までの支援を行う。新しいモノが買われなくなるレコノミーの時代の到来を実感し、フィードフォースに加入。ID統合とCDPを活用した人間中心のマーケティングのためのSDL構築と、生活者と企業の新しい生態系「IDeconomics」の実現を目指す。加えて、人事・採用のリスキリングにも挑戦中。












